グッド&ニュー


 あなたが、もし信長タイプだったら、会社や家庭でこのゲームをした
らどうだろうか。

    

「やってもらいたいのは、グッド&ニューという、ボールを使った簡単
なゲームなんだ。」

「グッド&ニュー。いいことと新しいこと。ゲーム?」

「そうなんだ。これは、ピーター・クライン先生という米国の教育学者
が開発した手法なんだ。短期間に組織のメンバーを前向きに変える
には最適な方法なんだ。やりはじめて早ければ3日で、前向きに変わ
りはじめたという触感が得られると思うよ。」

「何をやるかといえば、クッシュボールというボールを使うんだ。」

「早く教えてろよ。」

「まず、みんなが集まり、このボールを持った人は、24時間以内
に起こったいいこと、もしくは新しいことを簡単に話すんだ。話が終
わったら、他の人は拍手するんだ。そして次の人にボールを回すんだ。
あとはこの繰り返しだ。本当は、これを毎日行うといいんだ。毎日行え
ば、ひとり1分ちょっと話すとして、6人なら時間にして10分位かな。
これで組織内が変わりはじめるんだ。」。

「こんなことでうまくいくのかよ。」

「このゲームはね、簡単そうに見えるけど、人の考え方を前向きに変
えるために考えつくされた方法なんだよ。そもそもはクライン先生が
校内暴力の多発する学校で、安全な学習環境を短期間でつくるという
目的で行ったものなんだ。校内暴力といったって、日本の比じゃない
んだ。その学校の生徒を、短期間で前向きに変えるための手法だった
んだ。」

「なぜいいことと新しいことを話すと前向きに変わっていくんだ。」

「それじゃ、もう少し詳しく説明しようか。会社で教えてもらった受
け売りだけどな。これはな、心理学でいうリフレーミングと呼ばれる
作業を習慣化するゲームなんだ。リフレーミングとは、出来事のプラ
ス面を見るように解釈を変えることなんだ。よく人は。幸福だ、不幸だ
と言うが、同じ出来事でも、幸福と解釈する人と不幸と解釈する人が
いるんだ。」

「その通りだけど。もっと簡単に説明してみてくれよ。」

「例えば、どしゃぶりの雨の後、道のぬかるみを見て、『私はなんて
不幸なんだろう』と思う人もいれば、空の虹を見て『私はなんて幸福
なんだろう』と思う人もいるんだ。どちらも同じ状況にいるのに、解
釈がまったく違うんだ。どんな出来事でも、プラス面とマイナス面が
あるんだ。プラスに解釈するか、マイナスに解釈するかなんだ。」

「組織が循環しそうだな。そしたら、どんなことを話したらいいだ。」

「どんなことでもいいんだ。友達と映画を観て感動したとか。お客さんに
誉められたとか。難しい問題が出来たとか。今朝、電車に乗ったとき
座れたとか。いいことや新しいことは、情熱をもって語られ、笑いを呼ん
だりしやすいんだ。お互いをよりよく知るきっかけにもなり、組織内
の雰囲気が明るくなると思うよ。信長タイプのおまえにはもってこいだ。」

「分かったぞ。でも、なぜこんなボールを使うんだ。」

「僕もはじめは理解できなかったけど。でも試しにボールなしでやっ
てみるといいよ。するとね、みんな固くなって、しゃべれなくなるん
だ。防御の姿勢をとるようになるんだ。その姿勢で何か話そうとする
と、当たり障りのないことを言うだけになるのさ。」

「ところがボールを使うとね、リラックスして身体が開いてくるんだ。
身体が開いているから感情も開き、本当に楽しかったことを言い出す
のさ。」

「こう聞いてみると、楽しそうだな。」

「あと、このボール、カラフルだろ。色は右脳を刺激して、学習効率
を上げるんだ。このグッド&ニューというゲームは、学習環境も整え
ていってくれるんだ。」

「みんなの勉強にも役立つということか。」

「ボールじゃなくて、別にお手玉でもいいんだ。」

「ほんとうにありがとう。是非、やってみるよ」



     神田昌典著「成功者の告白」参照


      



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